「履歴事項全部証明書」とは、会社の登記事項を証明する書類で、会社の商号、本店、目的、資本金、役員などを確認できます。ただし、3年以上以前の情報は「閉鎖事項証明書」へ移る仕組みとなっており、過去履歴を調べたい場合は閉鎖事項証明書の取得が必要です。本記事では「閉鎖事項証明書」から読み取れる情報、活用方法を解説します。GVA 登記簿取得なら履歴事項全部証明書をネットから取得従来、履歴事項全部証明書の取得は法務局の窓口に行くのが一般的でしたが、現在はオンラインでの取得が非常に便利になっています。おすすめなのが、GVA 登記簿取得のような法人登記情報取得サービスです。こうしたサービスを利用すれば、一つのプラットフォームで履歴事項全部証明書と登記情報PDFの両方を同時に請求できます。例えば、「まずは取引先の最新情報を登記情報PDFで即時に確認し、契約手続きのために履歴事項全部証明書を郵送で取り寄せる」といった使い方がワンストップで可能です。クレジットカード決済にも対応しており、時間と労力を大幅に削減する有効な手段です。履歴事項全部証明書(履歴事項証明書)とは会社の商号、本店、目的、資本金、役員などの情報が記載されている法人の履歴書のようなもので、最新の登記事項※に加えて、過去履歴のうち3年間に抹消された事項なども記載されているという特徴があります。履歴事項全部証明書のほかに、記載範囲が限定された「履歴事項一部証明書」が存在しますので、以下ではまとめて「履歴事項証明書」と表記します。※「商号」と「本店」については、最新の登記事項のほか、一つ前の変更履歴も記載されます。閉鎖事項証明書とは効力を有しない登記事項は、抹消する記号が記録されたのち、履歴事項証明書に記載されなくなったもの(おおよそ3年以上前の事項)から順次「閉鎖」され、以降は「閉鎖した登記事項」として管理される仕組みになっています。「閉鎖した登記事項」を確認するためには「閉鎖事項証明書」を取得する必要があります。閉鎖事項証明書と履歴事項証明書の違い前述のとおり、閉鎖事項証明書は企業や店舗の存続終了を証明するものであり、履歴事項証明書は登記簿上の変更履歴を証明するものです。履歴事項証明書では、交付請求日の3年前の年の1月1日以降の登記記録が記載されるため、それ以前の情報を確認するためには、保存期間が20年間の閉鎖事項証明書が必要になります。どちらの証明書も、企業の信頼性や取引先との関係構築において重要な役割を果たします。履歴事項と閉鎖事項は「基準日」で分けられる会社に関する登記では「基準日」を定めて、個別の登記事項が履歴事項と閉鎖事項のどちらの証明書へ記載されるのかを区別しています。基準日は、証明書の交付請求日の3年前の日の属する年の1月1日と定められています(商業登記規則第30条)。具体例2022年2月22日に証明書の交付請求をした場合、2019年1月1日が基準日となる。すると、2019年1月1日~2022年2月22日に抹消された事項は「履歴事項全部証明書」に記載され、2018年12月31日以前に抹消された事項は「閉鎖事項証明書」に記載される。閉鎖事項証明書から得られる情報閉鎖事項証明書の情報は、抹消事項に限られません。例えば過去の「合併」「組織変更」「本店移転」「清算結了」などにより、登記記録全体が閉鎖された情報も、閉鎖事項証明書を取得することで確認できることがあります。以下では代表例を3つ挙げてそれぞれ説明します。なお、閉鎖記録の保存期間は20年です。【代表例1】合併により解散した会社の情報合併には2社以上の会社が関わり、そのうち少なくとも1社は解散することになります。その際に、解散した会社(『消滅会社』といいます)に関する登記事項は、一方の会社(『存続会社』といいます)の登記事項へ転記されることなく閉鎖されます。たとえ消滅会社が歴史ある会社であったり、規模の大きい会社であったりしても、合併後にどの会社を存続させるかは自由ですから、存続会社の登記事項証明書だけでは会社実態を把握できないケースがあります。そこで、消滅会社に関する登記事項を確認するために、消滅会社の「閉鎖事項証明書」の取得が必要です。【代表例2】管轄外本店移転により閉鎖された情報会社の本店所在地を管轄登記所(法務局・出張所等)の管轄外に移す場合は、管轄外本店移転として登記手続きが必要となり、旧所在地での登記記録は閉鎖されます。たとえば、本店所在地を東京都文京区から東京都中央区に移す場合は、管轄登記所は「東京法務局」のまま変わりません。しかし、本店所在地を東京都文京区から埼玉県川口市に移す場合には、管轄登記所は「東京法務局」から「さいたま地方法務局」に変わります。このような本店移転を「管轄外本店移転」といい、十分な会社情報を得るには、現所在地の登記事項証明書のほかに、旧所在地の「閉鎖事項証明書」が必要となる場合があります。なお、管轄は登記所の統廃合などにより変わる可能性がありますので注意が必要です。【代表例3】特例有限会社から株式会社へ商号変更により閉鎖された情報一般的に商号を変更しても登記記録は閉鎖されず、変更事項として履歴事項証明書に記載されます。ただし、特例有限会社(一般的な『有限会社』を指す法令上の名称。以下で説明。)が純粋な株式会社に移行すると特例有限会社の登記記録が閉鎖され、株式会社の登記記録が作成されます。特例有限会社から株式会社への移行手続きを行った会社は、株式会社の登記事項証明書に加えて、有限会社の「閉鎖事項証明書」を取得することで、商号変更前の登記記録を確認することができます。特例有限会社とは平成18年5月1日の会社法施行により、会社の形態は合名・合資・合同・株式会社の4類型となり、既存の有限会社は特例有限会社として、株式会社の一種と位置づけられました。ただし、特例有限会社は取締役会を設置できないことや、公開会社になれないことなど、純粋な株式会社とは異なる取扱いです。そこで「商号変更」の手続きを経ることで、純粋な株式会社へ移行するケースがあります。特例有限会社の情報が閉鎖される仕組み特例有限会社が株式会社へ移行するために行う商号変更の登記申請は、一般的な商号変更の登記申請とは異なり、特例有限会社の商号変更による株式会社設立登記を申請します。これによって特例有限会社の登記記録は閉鎖されます。閉鎖事項証明書の見方閉鎖事項証明書の登記事項は下線が引かれていることが多いです。それらは過去に登記事項であったことを証明しています。閉鎖事項証明書の下段欄外に「下線のあるものは抹消事項であることを示す」と記載されているのはこの意味です。下線は履歴事項証明書でも一部に使われることがありますが、こちらも同じく抹消事項であることを表しています。閉鎖事項証明書の取得方法全国の登記所で取得可能です。登記所に設置された申請書へ①申請人の住所・氏名②取得したい会社の商号・本店③閉鎖事項証明書の取得をそれぞれ記載し、手数料を支払います。履歴事項証明書とセットで取得すれば、会社の情報を網羅することができます。また、法務省のオンラインサービスである「登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと供託ねっと)」にアクセスすると、インターネットから証明書の交付請求が可能で、郵送受取または指定した登記所等での窓口受取が選べます。インターネットで閉鎖事項を確認する方法登記所の保有する登記記録(登記データ)は、一般財団法人 民事法務協会が提供する「インターネット登記情報提供サービス」で確認することができます。画面を印刷したものには登記官の認証文や登記官印が付されておらず、法的な証明力がないというデメリットはありますが、その場で登記内容が確認でき、1件当たりの利用料も332円と安価に抑えることができる便利なサービスです。なお、コンピュータ化より前の閉鎖登記簿は、管轄登記所に紙媒体でのみ存在する為、インターネット上で確認することはできません。目的に応じた登記事項証明書を活用しましょう登記事項証明書は会社の実態を把握する情報として、重要な意味をもっています。全ての会社に登記義務がある為、公式ホームページなどで会社の本店、目的、資本金、役員などを公開していない企業であっても、登記事項証明書で確認できます。過去の登記事項が記載された「閉鎖事項証明書」も活用すれば、取引先の情報を正しく把握でき、企業のリスク回避の効果も期待できます。