ビジネスにおいて取引先の信用度を測ったり、自社の状況を証明・確認したりするために、一般的に利用されるのが、「履歴事項全部証明書」と「登記情報提供サービスのPDF(以下、登記情報PDF)」です。これらはどちらも法務局の登記記録に基づいて会社の現在の状況を明らかにする書類ですが、その性質や利用目的は異なります。本記事では、これらの書類を取得したことがない方にも分かりやすく、サンプルを交えながら解説します。履歴事項全部証明書とは?履歴事項全部証明書は、法務局が管理する登記記録に記載されている会社の情報を、登記官が公式に証明した書類です。一般的に「会社の謄本(とうほん)」と呼ばれることも多く、法的な証明力を持つことが最大の特徴です。主な目的と用途その公的な証明力から、主に以下のような重要な手続きにおいて提出を求められます。金融機関からの融資:会社の存在と内容を証明するために必須です。不動産の契約:会社の代表者が正当な権限を持っていることを示すために必要となります。許認可の申請:官公庁へ建設業や古物商などの許可を申請する際の添付書類として利用されます。補助金・助成金の申請:申請者が適格な法人であることを証明します。訴訟手続き:裁判所に提出する書類の一部として必要になる場合があります。以下が履歴事項全部証明書のサンプル画像です。実際の書類では左下や最終ページに「これは登記記録に記録されている情報と相違ないことを証明する」といった趣旨の認証文と、法務局の印(登記官印)が押されています。この認証文と印が、この書類が持つ法的な証明力の源泉です。記載されている内容は、請求日から遡って3年前の1月1日以降に変更があった履歴情報と、現在の登記事項です。登記情報PDFとは?登記情報PDFは、法務局が保有する登記情報をインターネット経由で誰でも閲覧できる「登記情報提供サービス」を利用して取得したデータです。PDF形式でダウンロードでき、パソコンやスマートフォンですぐに内容を確認できる手軽さが魅力です。主な目的と用途履歴事項全部証明書と異なり、法的な証明力はありません。登記官の認証や公印がないため、そのままでは公的な手続きの提出書類として認められないことがほとんどです。その代わり、最新の登記情報を迅速かつ安価に確認したい場合に非常に役立ちます。取引先の与信調査:新規取引を開始する前に、相手の会社が実在するか、代表者は誰か、資本金はいくらかといった基本情報をスピーディーに確認できます。M&Aやデューデリジェンスの初期段階:対象会社の登記情報を網羅的に確認し、リスクを洗い出すための資料として利用します。自社の登記内容の確認:役員変更や本店移転などの登記申請が正しく完了したかを、法務局へ行かずに即座にチェックできます。以下のサンプル画像(2ページ以降のサンプルはこちら)を見ると、記載されている項目(商号、本店、役員など)は履歴事項全部証明書とほぼ同じですが、認証文や登記官印がないことが分かります。あくまで「登記情報の写し」という位置づけです。履歴事項全部証明書も登記情報PDFもネットで取得できる従来、履歴事項全部証明書の取得は法務局の窓口に行くのが一般的でしたが、現在はオンラインでの取得が非常に便利になっています。一方で、履歴事項全部証明書のオンライン請求と、登記情報PDFを取得する登記情報提供サービスは、それぞれ別のシステムを利用する必要があり、手続きが煩雑に感じるかもしれません。そこでおすすめなのが、「GVA 登記簿取得」のような法人登記情報取得サービスです。こうしたサービスを利用すれば、一つのプラットフォームで履歴事項全部証明書と登記情報PDFの両方を同時に請求できます。例えば、「まずは取引先の最新情報を登記情報PDFで即時に確認し、契約手続きのために履歴事項全部証明書を郵送で取り寄せる」といった使い方がワンストップで可能です。クレジットカード決済にも対応しており、時間と労力を大幅に削減する有効な手段となります。用途に合わせて適切な書類を把握しておきましょう履歴事項全部証明書と登記情報PDFは、似ているようで全く異なる役割を持つ書類です。「証明」が必要なら、履歴事項全部証明書「確認」で十分なら、登記情報PDFこの基本をしっかり押さえておくことが重要です。提出先がどちらの書類を求めているのかを事前に確認し、目的に応じて適切な書類を選択することで、無駄な手間やコストを避け、本業に集中することができます。