履歴事項全部証明書にあまり馴染みがなく、どのような書類なのか、何が記載されているのか詳しくないという方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では履歴事項全部証明書の記載項目の見方、特に役員に関する事項の見方に焦点を当ててお伝えします。そして、履歴事項全部証明書が必要となるシーン、そして複数ある取得方法についても解説します。この記事をお読みいただくことで履歴事項全部証明書がどういった書類なのか、また役員に関する事項の見方が分かるようになりますので、ぜひご覧ください。履歴事項全部証明書の記載項目は?履歴事項全部証明書とは、法務局に登記されている会社や法人の情報を証明する書類の一つで、法人名や事業目的、役員名、設立年月日などの基本的な法人情報が記載されています。履歴事項全部証明書の記載項目について①会社法人等番号 会社法人等番号とは、日本国内に設立された法人に対して、法務省によって割り当てられる12桁の識別番号であり、行政機関における各種手続きや、取引先との契約締結時など、会社を特定する必要がある場面で広く使用されます。この番号は、会社の設立時に自動的に付与され、公開されています。②商号(会社名) 商号(会社名)とは、会社が事業活動を行う上で使用する正式な名称です。法令によって商号には一定の制約があり、例えば銀行法によって銀行以外の会社が「○○銀行」などの銀行名をつけることは禁止されているなどの条件があります。また、商号を変更する場合には、株主総会の特別決議を経て、法務局に商号変更登記を申請する必要があります。③本店(本店の住所) 本店(本店の住所)とは、いわゆる本社の住所です。本店所在地を変更する場合には、取締役会等で決定するほか、必要に応じて株主総会の決議で定款を変更する必要があります。また、変更した場合は法務局に本店移転登記を申請する必要があります。④公告をする方法 公告をする方法とは会社が法律で義務付けられた事項を、株主や債権者などの利害関係者に広く知らせるための方法であり、会社法によって定められています。公告の方法としては、官報への掲載、日刊新聞への掲載、電子公告などがあります。公告しなければならない事項としては、決算公告、合併公告、資本減少公告などがあります。公告の方法や内容は会社の定款に定めることとなっており、定款に定めがない場合の公告方法は官報への掲載となります。変更する場合には定款変更の手続きが必要です。⑤会社設立の年月日(会社設立日) 会社設立の年月日(会社設立日) とは、会社が法的に成立した日です。⑥目的(会社の事業内容) 目的(会社の事業内容)とは、会社の事業内容を具体的に示すもので、付随する内容も含まれます。特に行政の許認可申請が必要な事業では、その申請の際に当該事業についてこの目的に含まれていることが求められる場合もあります。目的を変更する場合には、株主総会の特別決議を経て定款を変更し、法務局に目的変更登記を申請する必要があります。⑦発行可能株式総数 発行可能株式総数とは、会社が発行できる株式の最大数であり、会社の定款に定められます。発行可能株式総数を変更する場合には、株主総会の特別決議を経て定款を変更し、法務局に発行可能株式総数変更登記を申請する必要があります。⑧発行済株式の総数並びに種類及び数 発行済株式の総数並びに種類及び数とは、会社が実際に発行している株式の数と種類です。⑨資本金の額 資本金の額とは、基本的には会社の設立時または増資時に株主から払い込まれた金額であり、会社の規模や財務状況を判断する材料のひとつとなります。資本金の額を変更する場合には、募集株式の発行や剰余金の資本組入れ等の手続きがあり、変更した場合は法務局に変更登記を申請する必要があります。⑩株式の譲渡制限に関する規定 株式の譲渡制限に関する規定とは、会社が発行する株式の譲渡を制限する規定であり、会社の定款に定められ、法務局に登記されるものです。株式の譲渡制限の内容としては、譲渡承認機関、譲渡承認の条件、譲渡制限の対象となる株式の種類などが定められます。株式の譲渡制限に関する規定は、会社の定款に定められるため、株主総会の特別決議を経て変更する必要があります。⑪役員に関する事項 役員に関する事項とは、会社の代表取締役、取締役、監査役などの情報であり、会社の経営体制を示すものです。役員の氏名、役職、就任した年月日などが記載されます。また代表取締役のみ住所が記載されます。役員に関する事項については後ほど詳細に解説します。⑫支店 支店とは、本店の支社として、本店とは別の場所で事業活動を行う事業所の情報です。支店所在地が登記簿に記載されます。支店の設置や廃止は、取締役会の決議によって行われます。⑬監査役設置会社に関する事項 監査役設置会社に関する事項とは、監査役を設置していることを示す登記事項の一つです。この見本にはありませんが、他に取締役会を設置している会社の場合にはその旨が記載されます。⑭民事再生に関する事項 民事再生とは、登記事項の一つで、民事再生手続開始決定や終結、再生手続廃止の決定があると記載されます。なければ記載されません。この見本にはありませんが、会社更生についても開始決定や終結決定があると同様に記載されます。⑮破産に関する事項 破産とは、登記事項の一つで、法人破産(会社破産)の手続きが開始すると、破産手続きが開始した旨が記載されます。なければ記載されません。⑯登記記録に関する事項 登記記録に関する事項とは、設立や閉鎖などに関する事項を記載する欄です。なお、記載内容に下線が引かれているものがあります。下線部分は以前の登記情報であり、現在有効な情報は下線が引かれていない箇所となっています。履歴事項全部証明書の「役員に関する事項」の見方次に、履歴事項全部証明書の「役員に関する事項」欄での記載内容を解説します。日付や文言の見方、さらには有限会社や合同会社についてもそれぞれサンプル画像を見ながら、様々なパターンについて紹介していきます。役員に関する事項の日付などの見方この表は、とある法人の履歴事項全部証明書の一部です。上から順に2名について、・平成20年6月24日に就任、登記された日は8月7日平成21年3月31日任期満了または資格喪失による退任、登記がされたのは6月23日・平成20年6月24日に就任、登記された日は8月7日平成21年4月1日任期満了に伴い重任、登記がされたのは6月23日平成21年6月24日任期を残して辞任、登記がされたのは7月30日このほか、住所変更、氏名変更、株主総会での解任、死亡などの事由によって変更登記が必要となります。変更登記は会社法によって2週間以内に申請手続をすることと定められています。2週間を経過しても登記申請は可能ですが、登記手続をしないことを登記懈怠(とうきけたい)といい、登記懈怠となった会社は代表者個人に100万円以下の過料に処せられる可能性がありますので注意しましょう。有限会社の履歴事項全部証明書の「役員に関する事項」の特徴平成18年の会社法の施行により、新たな有限会社は設立できなくなりました。そしてその際に既存の有限会社は名称はそのままに、法的には「特例有限会社」として株式会社の一つとして存続することとなりました。但し、役員任期が法定されない(定款で任期を定めることは可能)など、通常の株式会社とは異なる点がいくつかあります。 通常の株式会社では代表者である「代表取締役」のみが住所と登記するのに対して、有限会社では取締役・監査役の住所が登記されます。また、株式会社は必ず代表取締役が登記されますが、有限会社については、代表権を有しない取締役が存在する時に限り代表取締役が登記されます。そのため、取締役しか登記されていない場合、取締役全員が代表権を保有していることになります。さらに役員任期が法定されていないため、辞任はありますが退任や重任は通常登記されません。合同会社の履歴事項全部証明書の「社員に関する事項」の特徴合同会社には「役員」はなく、出資により持分を取得する「社員」が業務執行権限を有することとされています。そのため「役員に関する事項」ではなく「社員に関する事項」という欄となっており、社員の情報が記載されています。またすべての社員が登記されるわけではなく、業務を執行する社員として「業務執行社員」は氏名のみが登記され、さらにそのうちの会社を代表する社員として「代表社員」は氏名と住所が記載されています。社員は法人がなることも可能で、その場合は法人が業務執行社員・代表社員として登記されています。法人が業務執行社員となる場合には自然人の職務執行者を選任することとなっており、代表社員が法人の場合はその職務執行者の氏名と住所が登記されます。また、任期は法定されていないため、通常は退任や重任は存在しません。履歴事項全部証明書が必要になるシーン履歴事項全部証明書は、口座開設や融資申し込みといった銀行取引や不動産取引、そして許認可申請や補助金・助成金申請といった行政機関への手続きの際に必要となります。履歴事項全部証明書が必要な際の取得方法ここでは、履歴事項全部証明書が必要となった際に取得する方法を解説します。取得方法は窓口、郵送、オンラインがありますのでご都合のよろしい方法をお選びください。窓口で取得する方法全国にある法務局かその出張所に直接行き、法務局に置いてある申請書に必要事項を記入して請求します。場所によっては証明書発行機が設置されており、申請書に記入する代わりに機械の操作で請求ができます。登記簿謄本は誰でも取得可能となっており、請求する人の身分証提示なども必要ありません。手数料は必要な金額分の収入印紙を買って納めることで支払います。収入印紙は同じ庁舎内の窓口など、その場ですぐに購入できます。また、その法人の所在地に関係なく、全国の法務局で登記簿謄本を取得することができます。郵送で取得する方法郵送で請求するには、まず法務局のウェブサイトから「登記事項証明書交付申請書」をダウンロードまし、必要事項を記入します。次に、証明書の種類と枚数に応じた手数料分の収入印紙を郵便局などで購入し、申請書の所定欄に貼り付けます。返信用封筒には、請求者の住所・氏名を記載し、必要な切手を貼付します。これらの書類を同封し、法務局へ郵送します。到着まで2週間はみておくといいでしょう。オンラインで取得する方法オンライン取得の方法として、まず法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を通じてインターネットで請求することができます。利用するにはパソコン上での事前設定が必要です。利用可能時間は、平日の8時半から21時までです。但し、17時15分以降の請求は翌日の8時30分以降に受付となります。手数料の納付はネットバンキング等となります。オンラインでの申請ですが、受け取り方法は法務局の窓口または郵送のどちらかを選択となります。より簡単に法人登記簿の取得申請ができるオンラインサービスの「GVA 登記簿取得」は、メールアドレスだけの入力で簡単に謄本の取得申請ができます。郵送のみの対応となっているため取得までの日程に余裕がある方はご利用を検討してみてはいかがでしょうか。