企業の経営者や経理担当者、あるいは新規事業を検討している方々にとって、法人の登記簿謄本(登記事項証明書)は、様々な場面で必要となる重要な書類です。取引先の信用調査、融資の申し込み、許認可の申請など、その用途は多岐にわたります。しかし、その取得方法については、意外と知られていないことも多いのではないでしょうか。この記事では、法人の登記簿謄本の概要から、具体的な取得方法、オンラインでの便利な取得サービスまで詳しく解説します。この記事を読むことで、登記簿謄本の取得に関する疑問を解消し、スムーズな手続きを行えるようになるでしょう。法人の登記簿謄本とは法人の登記簿謄本は、会社の身分証明書のようなもので、その会社の基本的な情報が記載されており、正式名称は「登記事項証明書」と言います。ここでは、それぞれの種類と、その中でも最も一般的に使用される「履歴事項全部証明書」について詳しく説明します。法人の登記簿謄本は4種の証明書の総称をいう法人の登記簿謄本(登記事項証明書)とは、「履歴事項(全部)証明書、現在事項証明書、代表者事項証明書、閉鎖事項証明書」の総称として使われています。これらの証明書は、法務局が管理する登記記録に基づいて発行され、会社の基本的な情報や変更履歴などを確認することができます。一般的に「法人の登記簿謄本」と言えば、「履歴事項全部証明書」を指すことが多くなります。これは、会社の現在の情報と、過去約3年分の抹消事項などが記載されているため、情報量が多く、様々な場面で利用されるからです。履歴事項全部証明書の概要や他の証明書との違い履歴事項全部証明書は「会社の設立年月日、商号(会社名)、本店所在地、役員の氏名、資本金の額、株式の発行状況」など、会社の基本的な情報に加えて、過去の抹消事項(商号変更、本店移転、役員変更など)が約3年分記載されています。そのため、会社の現在の状況だけでなく、過去の経緯も把握することができます。これにより、取引先の信用調査や、自社の沿革を確認する際などに非常に役立ちます。履歴事項全部証明書の記載例現在事項全部証明書の記載例参考:法務省「別紙 登記事項証明書等(記載例)」法人の登記簿謄本(登記事項証明書)比較表記載内容期間その他履歴事項全部証明書会社の設立年月日、商号、本店所在地、役員の氏名、資本金の額、株式の発行状況など、会社の基本的な情報に加えて、過去の抹消事項(商号変更、本店移転、役員変更など)が記載されています。過去約3年間に抹消された事項も記載会社の現在の状況だけでなく、過去の経緯も把握することができます。現在事項全部証明書現在有効な登記事項のほかは、会社の設立年月日、直前の商号・本店所在地、役員等の就任年月日のみが記載されています。現在抹消された事項は記載されません。代表者事項証明書会社の代表者の資格を証明するもので、会社法人等番号・商号・本店所在地と、代表者の氏名・住所・資格(代表取締役など)が記載されています。現在会社の代表者を証明する必要がある場合に利用します。変更履歴は記載されません。閉鎖事項全部証明書清算や合併などによって閉鎖された法人の登記事項が記載されている書類です。役員の在籍期間や本店所在地の移転など、過去の登記事項を確認するために取得します。過去(保存期間20年)過去に会社に生じた登記事項を把握するために使用されます。法人の登記簿謄本の取得方法法人の登記簿謄本を取得するには、いくつかの方法があります。時間や手間、費用などを考慮し、ご自身の状況に最適な方法を選択することが重要です。従来の法務局窓口や郵送での申請に加えて、近年ではオンラインでの申請も可能になり、より手軽に取得できるようになりました。この記事では、4つの取得方法について、ポイントや注意点を詳しく解説し、それぞれのメリット・デメリットを比較検討します。ご自身のニーズに合った方法を見つけ、スムーズに登記簿謄本を取得しましょう。取得方法は4つ法務局の窓口に出向いて申請する法務局に郵送で申請する登記・供託オンライン申請システムを利用するGVA 登記簿取得を利用する1.法務局の窓口に出向いて申請する法務局の窓口に出向いて申請する流れを説明します。1)最寄りの法務局の窓口に足を運ぶ登記簿謄本は、会社の所在地を管轄する法務局だけでなく、全国どこの法務局でも取得できます。そのため、例えば出張先や、自宅近くの法務局など、ご自身の都合の良い場所で申請が可能です。2)備え付けの「登記事項証明書 交付申請書」に必要事項を記入する法務局の窓口には、「登記事項証明書 交付申請書」という専用の申請用紙が備え付けられています。この申請書に、必要事項を記入します。具体的には、申請書の「①全部事項証明書(謄本)」の「履歴事項証明書(閉鎖されていない登記事項の証明)」の欄にチェックを入れ、必要な通数を記入します。通常、法人の登記簿謄本と言えば、この「履歴事項全部証明書」を指すことが一般的です。その他、会社の商号(会社名)、本店所在地、申請者の氏名・住所などを記入します。参考:法務局「会社法人用 登記事項証明書等 交付申請書(記載例)」3)600円の収入印紙を購入して貼り付ける登記簿謄本の交付手数料は、1通につき600円です。法務局内にある印紙売り場で、必要な通数分の収入印紙を購入し、申請書に貼り付けます。収入印紙は、現金での購入のみで、クレジットカードなどのキャッシュレス決済は利用できません。また、収入印紙の種類(金額)によっては、郵便局やコンビニエンスストアでも、購入可能です。4)申請書を提出する必要事項を記入し、収入印紙を貼り付けた申請書を、法務局の窓口に提出します。窓口の担当者が申請内容を確認し、不備がなければ受理されます。法務局の窓口の営業時間は、平日の9:00~17:00です。土日祝日や年末年始などは閉庁しているため、注意が必要です。5)登記簿謄本を受け取る申請が受理されると、登記簿謄本が交付されます。混雑状況などによりますが、基本的には、当日中に受け取れることが大半です。どうしても当日中に受け取りたい場合には、混雑状況の事前確認や、午前中など早めの来庁を心がけましょう。2.法務局に郵送で申請する法務局の窓口に行く時間がない場合は、郵送で申請することもできます。まず、法務局のウェブサイトなどで「登記事項証明書 交付申請書」を入手します。入手した申請書に、窓口での申請と同様に必要事項を記入し、600円分の収入印紙を貼り付けます。返信用封筒を用意し、返信先の住所・氏名を記入し、必要な金額の切手を貼ります。記入済みの申請書、収入印紙、返信用封筒を同封し、最寄りの法務局へ郵送します。郵送の場合、申請書が法務局に到着してから、登記簿謄本が返送されるまで、数日から1週間程度かかります。時間に余裕を持って申請するようにしましょう。3.登記・供託オンライン申請システムを利用する法務省が提供する「登記・供託オンライン申請システム」を利用して、オンラインで登記簿謄本の交付申請を行うことも可能です。まず、「登記・供託オンライン申請システム」のウェブサイトにアクセスし、利用者登録を行います。利用者登録後、ログインし、「かんたん証明書請求」のメニューから、登記簿謄本の交付申請を行います。申請の際には、会社の商号や本店所在地などの情報を入力し、交付方法(法務局窓口での受け取り、または郵送での受け取り)を選択します。電子納付に対応している金融機関の、インターネットバンキングやATM等を利用して、手数料を納付できます。登記簿謄本の受け取りは、窓口または郵送となるため、即日取得はできません。また、システムメンテナンスなどで利用できない時間帯もあります。4.GVA 登記簿取得を利用する手軽に、そしてスピーディーに登記簿謄本の取得を申請したい方には、「GVA登記簿取得」の利用をおすすめします。1)メールアドレスだけのかんたん登録「GVA 登記簿取得」は、面倒な手続きは一切不要。メールアドレスを登録するだけで、すぐにサービスを利用開始できます。必要な法人を検索し、取得したい証明書の種類と通数を選択するだけで、簡単に請求が完了します。2)PDFで即登記データの取得が可能「GVA 登記簿取得」の最大のメリットは、申請後すぐに登記情報をPDF形式でダウンロードできることです。金融機関への提出など、紙の証明書が必要な場合を除き、単に登記情報を確認したいだけであれば、「GVA 登記簿取得」を利用することで時間と手間を大幅に節約できます。3)「登記事項証明書 交付申請書」など面倒な書類の記入や提出は一切不要法務局での申請や、郵送での申請に必要な「登記事項証明書 交付申請書」の作成や提出は一切不要です。オンライン上で、簡単な操作を行うだけで、登記簿謄本の取得が完了します。4)「閉鎖事項全部証明書」の取り扱いはないので注意「GVA 登記簿取得」では、「閉鎖事項全部証明書」の取り扱いはありません。この証明書が必要な場合は、他の方法で申請する必要があります。「GVA 登記簿取得」は、登記情報をすぐに確認したい場合や、法務局に行く時間がない場合に、非常に便利なサービスです。登記簿謄本の概要を把握して便利に取得法人の登記簿謄本は、会社の基本的な情報や変更履歴が記載された公的な証明書であり、取引先の信用調査、融資の申し込み、許認可申請など、ビジネスの様々な場面で必要とされます。取得方法は、法務局の窓口での申請、郵送による申請、登記・供託オンライン申請システム、「GVA 登記簿取得」などの民間のオンラインサービスを利用するなど4つあります。法務局の窓口での申請は確実な方法ですが、平日の日中しか対応していないため時間的な制約があり、郵送による申請は窓口に行く手間は省けますが、手元に届くまでに時間がかかります。登記・供託オンライン申請システムは、証明書の受け取りは窓口または郵送になり、即日取得したい場合には不向きです。それぞれの取得方法には、メリットとデメリットが存在するため、ご自身の状況や目的に応じて、最適な方法を選択することが重要です。今回の記事を参考に、スムーズに法人の登記簿謄本を取得し、ビジネスを円滑に進めていただければ幸いです。